桜の国の画家たちが描いた日本人の魂の花。今回取り上げる三枚の“桜の絵”には、三者三様の壮絶なる人間ドラマがありました。
桃山時代の若き天才絵師・長谷川久蔵作、国宝「桜図」。金箔の雲の中で大きく枝を伸ばす満開の桜。
豊臣秀吉の命を受け描いた一世一代の大仕事でした。しかし絵の完成後ほどなくして久蔵は26歳で亡くなります。まさに悲劇の桜として。
日本画の巨人・横山大観が描いた「夜桜」は、決意の桜です。日本画の革新を目指した画業の集大成であり、ローマでの空前絶後の展覧会に込めた大観の熱き思いとは…。
洋画家・三岸節子が93歳の時に描き上げた「さいたさいた さくらがさいた」。波乱の人生の最後に、満開の桜に託した命の叫び。儚くも美しい「桜」に画家が見たものとは。

<Art Traveler>渡辺いっけい
<ナレーター>冨永愛