熊、ベアハッグに弱かった

「死ぬかと思った。助かった」。17日早朝、秋田県協和町境の山林で、豊嶋登さん(76)がクマに出くわした。けがをして入院先の病院で、豊嶋さんが語ったクマとの遭遇を再現してみると--。
 ワラビ採りを始めて5分もたたないころだった。ふと見上げると、わずか1メートルの距離に親グマと子グマがいた。親グマは立ち上がり、今にも襲いかかろうとしている。

 「クマは正面から抱きつかれると動きが鈍る」
 組み合うこと2~3分。顔を見上げると、クマはきばをむき「ハァーハァー」とうめき声をあげていた。「手を離したら、やられる」。次の瞬間、右足にありったけの力を込め、クマの左足を払った。クマは倒れ、豊嶋さんと抱き合ったまま斜面を10メートルほど転がり落ちた。切り株にぶつかり、クマと離れた。すぐに構えて後ろを振り向くと、走って逃げるクマの後ろ姿が見えたという。