>>837
 スポット賭博とは、競技中に起こる様々な出来事を対象とする賭け事だ(イギリスでは合法)。テニスの試合でのフォールトの数、自転車レースでの転倒者数、サッカーの試合開始から○分までにイエローカードが出るか、といった具合に。単純な勝敗予想と異なり、高度な分析や複雑な予想が必要になる。配当も高額になる。

 だが、当事者であれば状況をコントロールすることは可能だ。試合全体ではなく、「スポット」だからこそ、団体競技でありながら、個人が不正を働く環境が成立してしまう。ル・ティシエが不正を行ったのは「最初のスローインが行われる時間帯」を予想する賭け、だった。ブックメーカーは、最初のスローインを開始後1分以降と予測し、境界値を「1分~75秒」と設定。ル・ティシエとチームメイトは友人を介して、高額配当が期待できる「1分未満」を「買った」。

 試合開始後4秒でボールがタッチラインを割れば、ブックメーカー側の予想時間までに56秒の余裕があり、ル・ティシエたちは賭け金の56倍の設けを手に入れられる。