>>163
ドンドンドン。何やら音が響いてきた。時計の針は午前2時を回ろうとしている。
「うっさいな。なんの音だ、これ」
駿河台大駅伝部の監督を務める徳本一善は部員たちと同じ寮に住み、一人部屋ながら二段ベッドの下は荷物置き、上を寝床にしていた。天井が近いから上階の音はよく聞こえる。

そして上階の部屋の前に立つと、がちゃんと思い切りドアを開けた。中にいたのは4年生の部員たちだった。突然の監督の登場に恐れおののいた表情の中から徳本はキャプテンの阪本大貴の姿を見つけて声を荒げた。

「お前! 何考えてんだ、このやろう!!」

「お前なんかにやらせられるか。どれだけチームにむちゃくちゃしてきたと思っとるんだ」と一度は突き放したものの、本人は「反省してます。僕に任せてほしい」と自信たっぷりだった。その舌の根も乾かないうちに……。