古川日出男の原作『平家物語 犬王の巻』を元に、猿楽能(現代の能楽)で革新的な舞を見せた能楽師・犬王の生涯を描く。湯浅政明監督らしくただの歴史劇ではなく、なんとロックオペラとして、革命的な人物を描いてみせる。
しかし実際の映画を観るとひっかかりを覚えた。日本の伝統芸能となった能楽をロックやダンスで描く奇策は湯浅監督ならではだし、犬王の異様さを表現するのに確かなように思える。だがなぜか、古く感じた。
総評
歴史に消えた猿楽能の異端児をロックフェスとして描く奇策は大胆であり、湯浅監督が長らく描いてきた音楽とアニメートの到達点と言える。一方、肝心の “伝統的な社会や芸能を打ち破る”音楽の表現が使い古されたカウンターカルチャーを持ち出している印象があり、意外にも “打ち破る”説得力を弱く感じる。それでも謎に満ちた芸能の異端児を巡る、さまざまな解釈をもたらすストーリーは興味深い。

なんとなくこのアニメにも通じる駄目さだな