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嗚呼、操縦士は遂に比叡の山麓を超え眼下に京の街並みを見たのだ。「やった!」と同時にやり遂げたの思いがこみ上げる
彼はなお漕ぐ、はるかに見ゆるは嵐山・渡月橋だ。「ここに着水しよう」 ぐっと力を込めた。・・・が、其の脚はもう自分の物では
なかった。ふらふらとよろめき始める人力機。風にも流され始め、ドーピングの効果が切れたのを彼は知る。無線からは
皆の声が届く。それが初めてわずわらしくなってきた。もう脚に力は入らない。ついに彼は風に流され、その意思も届かぬまま
流されてゆく。その先にあったのは金閣寺であった。