>>261
1年もの時間を要したのは、立件するにあたりいくつもの障壁があったからだ。
島畑容疑者らは車から出て高野さんを踏切まで連れて行ったわけではなく、見送っただけとも言えなくもない。実際、4人は事件直後の任意の事情聴取で関与を否定した。
「だが、警視庁は4人でわざわざ迎えに行ったこと。その後最後まで現場にいた2人が、車で連れまわし、接触事故を起こす様子が見える場所にいたことを重視した」(警視庁関係者)
とはいえ4人を一斉に殺人罪で逮捕するには「決定打」に欠ける状況だった。佐々木、岩出両容疑者に至っては、アパートまで迎えには行ったものの踏切の現場にすら行っていないのだ。
そこで当初警視庁が考えたのは、まずいじめについて先に立件する作戦だった。
「傷害や暴行で逮捕を3回ほど重ね、長期勾留中、自供を得てから本件殺人での立件を目指そうと考えた。
捜査員は容疑者の携帯に残されていた『いじめ動画』を医師に見せるなどして、どのような怪我を負った可能性があるか見解を聞くなどの地道な捜査を進めました」(同)
この作戦を敢行するにあたり、警視庁が神経を尖らせたのはすでに捜査情報をキャッチしていた報道各社の動きだった。
「夏くらいには半分以上の記者クラブ加盟社が捜査一課の動きを把握している状況だった。
そこで9月くらいに捜査一課幹部は記者クラブ加盟社に『傷害などで着手しても、殺人で立件するまでしばらく報道を控えてほしい』と要請を出しました。
『殺人を視野に』などと報道されると取り調べに影響が出ると考えたのです。ただ一部の社からは『行き過ぎた報道規制で従えない』と反発があった」(同)