2.1.5.2 神経変性疾患について

>その後 Savitz らが大規模な症例対照研究を行い、電磁界の暴露を受けた群でオッズ比が1.2(95%CI 1.0-1.4)と有意な差を認めた。また Feychting 及びHakanson らの研究でもアルツハイマー病発症に関する電磁界暴露による影響を認めた。しかしこれらの研究については鉄鋼労働者を対象としており、アルツハイマー病のリスクファクターと考えられている有機溶剤や重金属吸入といった交絡要因が存在する可能性がある。パーキンソン病については、Savitz らが電気業に勤める労働者におけるパーキンソン病による死亡を調べており、それによると唯一有意差の出た集団は、10-20 年もしくはそれ以上の期間、毎年0.49-0.888μT ずつ暴露を受けている集団であり、その集団は非暴露群と比し、パーキンソン病による死亡のオッズ比が 2.4(95%CI: 1.0-5.8)となっていた。
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)については Savits らが職種毎の ALS 発症のオッズ比を算出している。それによると電話修理業でオッズ比2.2(95%CI:1.0-4.6)、電装修理業でオッズ比 3.9(95%CI: 1.6-9.2)、発電所の操作員でオッズ比 4.8(95%CI:1.9-12.4)と、それぞれ有意差を認めた。また同様に暴露状況による死亡比の比較も行っているが、5 年以内の電磁界暴露群と比べて、5-20 年間にわたる電磁界暴露群では相対危険度が1.8(95%CI: 0.7-6.0)、20 年以上の暴露群では相対危険度が2.4(95%CI: 1.0-9.8)であった。また、電磁界に暴露される期間が長い職種にて就業することにより ALS による死亡の危険性が上昇することが示唆された。これらの結果より、強い電磁界暴露及び長期間の電磁界暴露は ALS のリスクファクターであると結論づけられた。