さらに、この赤い傷を負ったヒグマが、地元テレビ局の社長によって餌付けされた個体であったため、人間への警戒心が薄かったとも考えられています。

深夜のキャンプ場で起こった惨劇

しかしこの時、そんなことは分かっていません。「たまたまだろう」と思ったのか、星野は再三に渡るガイドの忠告を聞き入れず、テントでの宿泊を続行します。そして、2週間が経過したある日の深夜。悲劇は起こったのです。
キャンプ場に突如として響き渡る絶叫。
その声がすぐに星野のものだと分かったTBSスタッフは、急いで小屋から出ていきます。するとそこには、額に傷のある例のヒグマが彼を咥えて、悠々と森の中へ戻っていく姿が見えたのです。「テント!ベアー!ベアー!」とガイドに叫ぶスタッフたち。それを受けて、すぐにガイドがシャベルで応戦したものの、それをもろともせずにヒグマは立ち去っていきました。森の奥深くで発見されたときには、星野は無残に食い荒らされた後でした。

以上はTBSが作成した「遭難報告書」に基づく内容ですが、どうやらアメリカ人写真家やガイドの証言とは、いくつか食い違いもあるようです。