夢の国でも、人生とはままならないものなのだ。カネがあっても、コネを持っていても、人は必ずしも希望をすべては叶えられることはなく、いまある現状を受け入れ、流れ出る涙もいずれは頬で乾くと諦め、それでも家族で一緒に煌びやかな街並みを歩けるというささやかな幸せを噛み締めて、与えられたわずかなポップコーンを分かち合い、割高な食事、いずれすぐにゴミとなるであろうグッズを手に、それでも少しは楽しめたのだと感情ではなく根性で笑顔を作ることを求められているのです。

 そうか、これは資本主義を体現したディズニーリゾートの、本当に伝えたい人生の在り方なのだ。いまあるささやかな幸福を実感し、喜ぶための修練の場としての夢の国。何を楽しんだのかではなく、家族とただそこにあり、練り歩くことのできる小さな充足感を満たすための施設。確かにカール・マルクスも『資本論』の中で資本主義は寡占と格差社会を生むと喝破し、資本主義が行き届いた先に労働者が解放され共産主義の時代が来るのだ、と。
壮大な社会実験はソビエト連邦という自由主義陣営と拮抗する大共産圏を築き上げた後で歴史の荒波の中へ消えて行きましたが、実はその共産主義は形を変えて資本主義の権化のようなディズニーが構築したこの理想の国の中に、富める者も貧しい者も、ひとたびパスポートを買って入園すればポップコーンの前に並び、サーカスの前に並び、パレードの前に並ぶという驚くほど格差がない平等でプロレタリアートも解放される夢の世界を実現したのです。年金生活者も未就学児も勤労者も資本家もひとたびディズニーの門を潜れば誰でも簡単に、手軽にあのソ連を体験できる。これだ。私たちが求めた本当のリベラルの姿はこれだったのだ。やったぞ辻元清美さん、私は同志とともについに秘境に辿り着いたんですよ。理想とする政治、理想とする国民。計画経済の極意が、ここにある。共産主義が追い求めた真の解放の姿が、このディズニーランドの中にあったのです。

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