私の名はメガネ。かつては友引高校に通う平凡な一高校生であり、退屈な日常と戦い続ける下駄履きの生活者であった。
だが、あの夜、ハリアーのコックピットから目撃したあの衝撃の光景が私の運命を大きく変えてしまった。
ハリアーであたるの家に強行着陸したその翌日から世界はまるで開き直ったかの如くその装いを変えてしまったのだ。
いつもと同じ町、いつもと同じ角店、いつもと同じ公園・・・。だが何かが違う。
路上からは行き来する車の陰が消え、建て売り住宅の庭先にピアノの音も途絶え、牛丼屋のカウンターであわただしく食事をする人の姿も無い・・・。
この町に、いや、この世界に我々だけを残し、あの懐かしい人々は突然その姿を消してしまったのだ。
数日を経ずして荒廃という名の時が駆け抜けていった。かくも静かな、かくもあっけない終末をいったい誰が予想したであろうか?
人類が過去数千年にわたり営々として築き上げてきた文明と共に西暦は終った。