羽田沖日航機墜落事故体験記

 私の座席ナンバーは6-A。前から6列目の左端の窓際の席であった。
 午前8時30分頃には既に高度は下がっていて、関東上空にさしかかっていたと思う。徐々に降下していき、海に浮かぶ船が大きく見えてきた。いよいよ着陸である。更にぐんぐん高度が下がっていき、窓からのぞくと眼下に東京湾、前方に空港が見えた。急に離陸する時のような「ゴオーッ」というエンジン音(後で考えると、これが「逆噴射」の音だったようだ)がしたかと思うと、今度は急に機内が静かになった。と同時に機首が急激に下がり、前のめりのような格好になったのである。丁度ジェットコースターが滑り落ちるような感じだった。私はずっと窓の外を眺めていたので、みるみる海面が接近するのがわかった。乗客のざわざわする音は聞こえたが、着陸寸前の一瞬の出来事だったので悲鳴などを聞いた記憶はない。「危ない!」と思ったが叫ぶ暇もなかった。「ドドーン!」。猛烈な衝撃だった。海水や機体の破片、座席、或いは乗客であったかもしれないが、前から一斉に色々なものが飛んできて私にぶち当たった。私は目の前が真っ暗になり、それからはほとんど気を失ったようだ。