ガイドたちは星野に小屋で寝るよう説得したが、星野は「この時期はサケが川を上って食べ物が豊富だから、ヒグマは襲ってこない」として取り合わなかった。
一方でアメリカ人写真家は身の危険を感じ、近くの鮭観察タワーに宿泊した。

8月1日、環境保護団体のグループが訪れ同地でキャンプをしたが、靴をヒグマに持ち去られたり、写
真家が不在だった鮭観察タワーに泊まった1人は、一晩中タワーによじ登ろうとするヒグマに怯え眠れなかったという。
8月6日夜、再度星野のテント近くにヒグマが現れて、ガイドがスプレーで追い払った。
ガイドは再び強く小屋への移動を勧めたが、星野はこの時も聞き入れなかったという。

星野は「野生のヒグマは遡上する鮭の多いこの季節に人を襲わない」との考えからテントに泊まり続けた。
その知識は基本的には間違いではないが、今回星野を襲ったのは地元テレビ局の社長によって餌付けされていたヒグマで、
人間のもたらす食糧の味を知っている個体であった。さらにこの年は鮭の遡上が遅れ気味で、食糧が不足していた。