冬の夜、横浜駅前の冷たい石畳の上で目を覚ました。持ち物は、ポケットの底から出てきた31円と、小さなカバン、汚れたタオルのみ。なぜここにいるのか、
自分の年齢や名前に至るまで、すべての記憶がなくなっていた。鏡に映った自分の姿を見ても、そこには、見覚えのない男がいる。

混乱のまま、当てもなく横浜を歩き回り12日目、食事もろくに取れずに衰弱していたところを、見回りのボランティアに発見された。
名前が分からないままでは生活支援も受けられず、仮の名前が付けられた。
保護された場所、横浜市西区から、名字は「西」。同姓同名の住民がいないことを順番に確認し、付けられた名前は「六男」。

この日から彼は「西六男」としての人生を始める...