2022年5月、東京・東新宿の都営住宅で3人の親子が暮らし始めた。「こんにちは」と日本語でスタッフに挨拶をするのは、小学校に入学して1カ月のレギナちゃん(6歳)。「いつ帰れるか分からないのよ」と息子のマトヴェイくん(4歳)に語りかけていたのは母・マーヤさん(45歳)。まるで、自分に言い聞かせるように。親子はわずか2カ月前、戦火の中を脱出し、日本へと辿り着いたウクライナからの避難民。日本人の和真さん(35歳)と結婚した長女のアナスタシアさん(22歳)を頼って、遠く離れた日本に辿り着いたのだ。日本語も何も分からないまま、始まった東京での暮らし。レギナちゃんは小学校へ。マトヴェイくんは幼稚園へ。日本での生活に馴染んでいく子供達を見守りながら、母・マーヤさんは、どうしても戦火の故国に帰らなければならない理由を抱えていた。ところが、一向に終わりの見えない戦火。ロシアによる攻撃は激化し、一家が暮らしていた町にもミサイルが降り注ぐ。「今は絶対にウクライナに帰ってはいけない」と説得する家族。本当に幼い子供を日本に残して帰国するべきなのか。平和な日本の暮らしの中で、母・マーヤさんの心の中は大きく揺れていた…。果たして彼女が下した決断とは?ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1年…東京の片隅で、愛する故郷の戦火に翻弄される家族をみつめた。

【語り】芳根京子  【放送時間】14:00~14:55