人気ラーメン店を経営するフィリピン出身のシングルマザー…娘と2人で肩寄せ生き抜いた19年の奮闘の記録…コロナ禍と物価高騰で閉店の危機が…母と娘のラーメン物語
東京・神田小川町。ランチ時になるとビジネスマンが押し寄せるラーメン店がある。
店を切り盛りするのは女性店主のカンラスさん(40歳)。フィリピン出身のシングルマザーだ。
13年前にこの場所で店を開き、故郷の豚肉料理にヒントを得た「とろ肉」が名物の人気店だ。
「ホテルで働かないか?」と誘われ、貧しい家族の生活を支えるため19歳で来日。
だが、実際の仕事はフィリピンパプでの接客だった。それでもカンラスさんは懸命に働き、実家に仕送りする日々。
そんな中で、客の日本人男性との間に子どもを身ごもる。しかし、出産のために一時帰国すると男性との連絡は途絶えた。
そして彼女は悩んだ末に、生まれたばかりの娘と2人、日本で生きていくことを決めた。
彼女が選んだのは、ラーメン店でのアルバイト。しかし、その店もわずか1年で閉店。
職を失うことになったカンラスさんは、自らラーメン店を経営することを決断する。
他の店で食べられない味を生み出し、ラーメン激戦区の中で生き抜いた彼女の店は、今や人気店に。
心の支えとなっていた娘は19歳になった。2020年、日本を襲った新型コロナの嵐。
そして、とどめを刺すような物価高騰…必死に守り抜いてきた店は、時代の波にもまれ、閉店の危機にさらされる…
遠く離れた故国を離れ、生きるためにラーメンと向き合う母と、その背中をずっと見てきた娘。
大都会の片隅で、肩を寄せ合い生きる母と娘を見つめた…
【語り】松本若菜