夜になるにつれ風が強くなり、標高3千メートルの過酷な環境が女性たちを襲った。女性は日が暮れる前、台座の前を歩いて通り過ぎようとした男性に頼み、ザックの中からダウンジャケットと簡易テントを出してもらい、防寒対策として体に巻きつけていた。

ふと携帯電話をみると、一緒に登っていた友人から何度も着信があった形跡があった。友人は無事だったんだ。少しだけほっとして折り返し電話をかけた。

周りが暗くなる中、ただ寒さに耐えた。長野地方気象台によると、標高1千メートル付近にある御嶽山麓の開田高原で噴火翌朝の最低気温は6・6度。女性が一夜を過ごした標高3千メートル付近は氷点下だったことが想像される。過酷な環境に耐えられたのは、携帯電話から聞こえた友人の励ましの声だった。「私がここで死んだら友人はきっと自責の念にかられる。だから生き抜こう」。勇気を振り絞った。