正力の口癖は「男なら空前絶後の仕事をしろ」だったが、晩年の1966年に彼がブチ上げたのが、まさに空前絶後、4000mの高さの読売タワーだった。

基礎工事は山梨と静岡と神奈川にまたがるという巨大なもので、計画には設計図だけで2億円ものお金を投入している。

富士山の横に、それよりも高い塔がスッとそびえ立つ。読売タワーが実現していたら、富士山の風景も大きく変わっていただろう。

あまりのことに正力の知人からも「富士山の上にアンテナを建てれば良いじゃないか」というごもっともな発言も飛び出したそうだ。
しかし正力はあくまで4000mタワーにこだわった。
「それでは面白くない。下からつくるところに面白味があるんだ。こう(4000mタワーに)すると下の方の土台の面積が非常に広くなるから、
そこを全部百階建て、二百階建てのビルにする。世界一の塔と世界一の都会を同時に建設できるんだ(巨怪伝 佐野眞一 文藝春秋より)」