野球には、他の競技に比べて不正が介在しやすい要素が多い。一つのボールを対戦相手も使うサッカーやバスケットボール、バレーボールでは、ボールに細工をしても意味がない。その点野球では、3アウトを奪うまでボールは守備側の手中にあって、攻撃側は関与できない。

 バットを使う点にも不正の余地が生じる。バスケットやバレーは素手だし、フットボール系の競技もシューズを加工して得られる効果は微々たるものだろう。だが野球では、木製と金属の例を見ても分かるように、使うバットによって飛距離に明らかな差が生じる。

 だからこそコルクバットのように、「飛ぶバット」を作る工夫がなされるのだ。サイン盗みが成立するのも、1球ごとにプレーが止まってサインが出る野球ならではの特徴であり、戦術が複雑なだけに、サインを盗む動機も強くなる。つまり、野球という競技の奥深さが、これらのさまざま不正を生み出してきたとも言えるのだ。